用語解説 か行
この用語解説集は、当協会の発行する医業経営情報誌「機関誌JAHMC(ジャーマック)」でこれまでに掲載された「用語解説」の記事をデータベース化したものです。
【注意】掲載内容については、発行当時の情報に基づいた内容となりますので、現在の状況と異なるものがありますことをご了承ください。
家庭医(2007年05月号掲載)
わが国には家庭医制度が存在しないために、「家庭医」の厳密な定義はない。欧米では、文字どおり家庭に密着して診療する医師、または一般医療を受け持つ専門医として位置づけられている。
米国では、アメリカ家庭医学会、アメリカ家庭医専門医認定委員会、アメリカ医師会医学教育委員会が合同で作成した研修プログラムに従い、インターンを含めて3年間に内科、一般外科、小児科、産婦人科、精神科を系統的にローテートし、かつ救急外来、地域医療、グループ診療などの研修を終えた医師を、Board-Certified Family Physicianとして認定している。
家庭医に類する用語にはプライマリケア医、総合診療医、かかりつけ医などがある。プライマリケア医は1970年代の「アルマ・アタ」宣言以来、プライマリケアの要件として、医療の近接性、包括性、協調性、継続性、責任性がうたわれたことに依拠している。
わが国では1959年3月、医療保障委員会の提出資料の中で初めて「家庭医」という言葉が使用されたとされている。政策上は1978年3月、医師研修審議会から厚生大臣に対し、「プライマリケアを修得させるための方策」について意見具申がされた頃から家庭医論議が始まった。
旧厚生省は1985年6月、「家庭医に関する懇談会」を設置、1987年4月に「家庭医に関する懇談会報告書」を取りまとめた。その後、1990年から全国の都道府県で「家庭医機能研修事業」を実施したが、定着しないまま今日に至っている。
これら「家庭医」も「家庭医機能」も医師会をはじめ医療の現場に容認されることなく、言葉ばかりが「家庭医」→「家庭医機能」→「かかりつけ医(機能)」として変遷した。「かかりつけ医」は今日でも使用されているが、これもまた厳密な定義はなく、日本医師会が使用する場合は多分に「主治医」の、また厚生労働省の場合は「介護支援医」の響きがある。
総合診療医は家庭医が沙汰やみになった頃から使われ、「日本総合診療医学会」を組織している。同様に、プライマリケア医も「日本プライマリケア医学会」を組織している。ちなみに家庭医の場合は「日本家庭医療学会」を名乗っている。