資金調達
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社会医療法人および一般社団法人の医療機関が、金融機関に対して不動産担保差入(根抵当権、普通抵当権)、預金担保差入を行う場合において、医療法上の制約等があるか否か、また、制約等がある場合はその具体的内容についてご教示願います。
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医療法人の医療機関が金融機関から借り入れをし、担保差し入れをする場合の具体的な規制は、「病院又は老人保健施設等を開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」(平成2年3月1日健政発第110号別添、最終改正:令和元年9月13日医政発0913号)に、次のような規定が示されています。
Ⅲ 管理
2 資産管理
1 基本財産と運用財産とは明確に区分管理されていること。
2 法人の所有する不動産及び運営基金等重要な資産は基本財産として定款又は寄附行為に記載することが望ましいこと。
3 不動産の所有権又は賃借権については登記がなされていること。
4 基本財産の処分又は担保の提供については定款又は寄附行為に定められた手続きを経て、適正になされていること。
(備考)・所定の手続きを経ずに、処分又は担保に供している基本財産がないことが登記簿謄本により確認されること。
5 医療事業の経営上必要な運用財産は、適正に管理され、処分がみだりに行われていないこと。
6 そのため、現金は、銀行、信託会社に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管するものとすること(売買利益の獲得を目的とした株式保有は適当でないこと)。
(備考)・モデル定款・寄附行為
7 土地、建物等を賃貸借している場合は適正な契約がなされていること。
(備考)・賃貸借契約期間は医業経営の継続性の観点から、長期間であることが望ましいこと。
また、契約期間の更新が円滑にできるよう契約又は確認されていることが望ましいこと。
・賃借料は近隣の土地、建物等の賃借料と比較して著しく高額でないこと。
8 現在、使用していない土地・建物等については、長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のない資産は、例えば売却するなど、適正に管理又は整理することを原則とする。
その上で、長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のある資産、又は土地の区画若しくは建物の構造上処分することが困難な資産については、その限りにおいて、遊休資産の管理手段として事業として行われていないと判断される程度において賃貸しても差し支えないこと。
ただし、当該賃貸が医療法人の社会的信用を傷つけるおそれがないこと、また、当該賃貸を行うことにより、当該医療法人が開設する病院等の業務の円滑な遂行を妨げるおそれがないこと。
(備考)・長期的な観点から医療法人の業務の用に使用する可能性のある資産とは、例えば、病院等の建て替え用地であることなどが考えられること。
・土地を賃貸する場合に、賃貸契約が終了した際は、原則、更地で返却されることを前提とすること。
・新たな資産の取得は医療法人の業務の用に使用することを目的としたものであり、遊休資産としてこれを賃貸することは認められないこと。
・事業として行われていないと判断される程度とは、賃貸による収入の状況や貸付資産の管理の状況などを勘案して判断するものであること。
・遊休資産の賃貸による収入は損益計算書においては、事業外収益として計上するものであること。
3 会計管理
(1)(略)
(2)(略)
(3)債権債務の状況
1 借入金は、事業運営上の必要によりなされたものであること。
2 借入金は社員総会又は評議員会、理事会の議決を経て行われていること。
(備考)・モデル定款・寄附行為
3 借入金は全て証書で行われていること。
4 債権又は債務が財政規模に比し過大になっていないこと。
(備考)・法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、理事又は清算人は、直ちに破産手続の申立てをしなければならないこと。
(注)破産手続開始の申立てを怠った場合は、20万円以下の過料に処せられること。(医療法第93条第8号)これらの規定をもとに(モデル定款にも同様の規定があり)ご質問の「不動産等の担保差入れ」について、具体的に回答します。
1)借入金については、理事会または追加して社員総会の議決が必要で、その会議議事録をチェックすべきこと。
2)証書による(手形不可)こと。
3)不動産(定期預金の可能性もあり)は、基本財産とされていることもあり、そのケースでは定款の定めで理事会のほか社員総会の議決も必要なこと。ここには具体的に示されていませんが、医療法人は決算日前に予算総会を開き、翌年度の事業計画と予算を決議することになっており、そこに記載されているかどうか、県・主務担当者からチェックを受けます。臨時の理事会・社員総会を開いて決議するか、翌期まわしということも考えられます。
ご質問の根抵当権の設定については、「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分について」(大臣官房会計課長発第0417001号、第次改正・会発第1号、令和5年9月1日)で、補助金等の交付を受けて取得等した財産を譲渡、交換、貸し付け、担保に供した場合、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」で今般定められた「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分承認基準」に抵触する可能性があります。
具体的には、「補助財産を担保に供すること。」として「補助財産を担保に供する場合に設定できる抵当権は、普通の抵当権に限ります。」と制限しています。さらに「一方、根抵当権の代表的なものはカードローンです。借入限度額の範囲内で借入と返済を繰り返すことができるもので、財産処分の申請時に返済計画を立てることはできないので、抵当権の設定を承認することもできません。」と例示しており、医療法人の補助財産への根抵当権の設定は不明ですが、かなり危険なことと思います。県・主務課担当官と打ち合わせをして設定すべきと思います。回答日【2022.11.17】