人事管理

印刷用ページを表示

歯科医院の退職金制度について教えてください

 まず、退職金は必ずしも支給しなくてもよいと考える必要があります。 一般企業でも退職金を廃止する企業が増えています。 これは、退職金には次のようなデメリットがあるからです。

  1. 早期退職を募集する際に退職金が障害になる。 能力のない人材が会社にしがみつく傾向があり、 残られると退職金が上積みされてしまうからです。 歯科医院ではすでに歯科衛生士などが流動化しており、 大部分が3年から5年で転職していきます。 出産や育児で医院を離れる人材も多く、 企業のように20年~30年も勤務する職場環境ではありません。
  2. 退職金は歯科経営の見通しが不明確ななかで、 10年~15年後の大規模リニューアルが必要な時期に大きな出費となって医院経営を圧迫する懸念があります。
  3. 退職金にあてる金額を月次の賃金に上乗せすることで、 初任給などを高めに設定でき、優秀な人材を集めやすくなる。

 

逆に、退職金のメリットとしては、次のような項目があります。

  1. よい人材に長く勤めていただくための動機付け効果が期待できる。
  2. 定年後の生活資金に充当できるので従業員の生活が安定する。

 

 よい人材に長く勤めていただくためには、賃金や賞与の水準、 休みやすさなどでも対応可能です。 その意味で、退職金 を設ける意味があるかどうかについては十分検討しておく必要があります。 ただし、すでに退職金制度がある医院では、労働者の既得権になっていますので、 簡単に廃止することはできません。

退職金制度を設けるときの考え方は次の5つです。

  1. 勤続3年未満は支給しない。
  2. 勤続5年で頭打ちとする。退職金の高騰を防止し、高齢化を抑制する効果があります。
  3. 「退職時の基本給×勤続年数×退職金係数 (成績係数、退職事由係数)」とする。
  4. 勤務成績に応じて10%~50%の加減幅をつける。 評価の高い方は上積みすることができるし、評価の低い方はそれなりの退職金となります。
  5. 自己都合退職は減額することを明記しておく。
  6. 懲戒処分などを受けた場合には減額することを明記しておく。 悪質な行為を行った場合は、退職金を100%~50%減額することを明記しておく。

 

 中小企業退職金共済に加入すれば、将来の高額の出費を抑制することができます。 自医院独自で作る場合は次のサンプルを参考にしてください。 この表では基本給は一年に3,000円ずつ昇給し、25年で頭打ちとしています。 係数と功績加算を調整することで自院にあわせた退職金算定基準が出来ると思います。

【参考】歯科医院の退職金表事例

(1) 退職金表

勤続年数 基本給
(単位:万円)
係数 年数 退職金
(単位:万円)
3年未満 16 不支給
3年以上5年未満 18 02 3年 10
4年 14
5年以上10年未満 19 03 5年 29
6年 34
7年 40
8年 46
9年 51
10年以上15年未満 20 04 10年 80
11年 88
12年 96
13年 104
14年 112
15年以上20年未満 22 05 15年 165
16年 176
17年 187
18年 198
19年 209
20年以上25年未満 24 06 20年 288
21年 302
22年 317
23年 331
24年 346
25年以上 25 07 25年 438

(2)成績評価による係数の増減表

評価 加減率 25年以上の係数
+0.3 1.0
+0.15 0.85
±0 0.7
-0.15 0.55
-0.3 0.4

(3)退職事由による係数への増減率

退職事由 増減率
医院都合 ×1.0
早期退職 ×1.15
自己都合 ×1/2

■退職金額の計算

 退職金の計算は次のとおりとする。
 (1)退職金表と (2)成績評価による係数の増減結果による計算結果×(3.退職事由)による増減率
 この退職金の表でも、35年以上の勤務になると660万円と大変高額になります。 決算時に、十分な退職給与引当金を計上しておくことが必要です。
このページのトップへ