会計・節税対策(キャッシュフロー経営)
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医療法人が社宅・保養施設を保有する事はできるでしょうか。 また保有した場合、適正な家賃はどのように算定するのでしょうか。
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平成20年4月の医療法改正によって医療法人の公益性が強くなりました。
従って、行政の指導も厳しくなっています。 例えば、医療法人は配当が禁止されていますが、 殆ど理事長しか使わない保養施設の保有は、 配当類似行為とみなされる可能性があります。
社宅であっても、従業員寮や、 救急対応の為に近くに寝所を構える為であれば全く問題はありませんが、 理事長の自宅の場合は医療法人 を監督する官庁が許可しないケースもありますので注意が必要です。また医療法人 が個人に住宅を貸すケースでは税務上、次のようなことに注意する必要があります。
1.適正な家賃の目安
税務では、家屋の床面積等から次の三つに区分して適正な家賃の目安を示しています。
通常の社宅
通常の社宅である場合には、次の算式で計算した金額を、 個人から徴収すれば問題は生じません。
なお、通常の社宅とは、床面積が132平方メートル (木造家屋以外の場合には99平方メートル)を超え240平方メートル以下のものをいいます。
(A×12%+B×6%)× 1/12 = 通常の賃貸料月額
A その年度の家屋の固定資産税の課税標準額
B その年度の敷地の固定資産税の課税標準額
※木造家屋以外の家屋は12%→10%
小規模住宅の場合
床面積が132平方メートル(木造家屋以外の場合には、 99平方メートル)以下の場合には、次の算式により計算します。
A×0.2%+12円×{家屋の総床面積(?)/3.3(?)}+B×0.22%
=通常の賃貸料月額
この算式で計算した金額は、 本来一般の従業員が社宅 を借りている場合の家賃 の計算に適用されるものですが、 役員社宅であっても、一定規模以下であるときは同様に適用が認められているものです。
なお、下記の(1)及び(2)については、あくまで法人が 自己所有している家屋を社宅 として役員に貸した場合の取扱いです。
もし、法人が他から借り受けて、さらに役員に転貸しをするような場合には、 法人が支払う賃料の50%相当額と、 先ほどの算式で計算した金額のいずれか多いほうの金額が、 法人が役員から徴収すべき家賃となります。(1)豪華な役員社宅の場合
役員が社宅として借りている家屋が、 (1)その床面積が240平方メートルを超える場合、 (2)240平方メートル以下であっても、プールがあったり、 役員個人の趣味を著しく反映した設備を有するような場合については、 豪華な役員社宅として、 「その社宅が一般の賃貸住宅であるとした場合に支払うべき金額」を支払う必要があります。(2)低額な家賃の取扱い
役員が適正な家賃を支払っていれば税金の問題は生じませんが、 低額過ぎたり、支払っていない場合には次のように取り扱われます。
法人の税務上の取扱い
経済的合理性を追求する法人としては、受け取るべき家賃を役員報酬として支給したと考えます。
同額で、損益に影響はありませんが、過大役員報酬の判定と役員報酬の源泉徴収の問題があります。(3)役員の税務上の取扱い
適正な家賃に比べて低い家賃を支払っている場合には、 その差額分が役員報酬として給与所得の収入金額に加算されることになります。 よって、その金額を含めたところで、所得税や住民税が計算さ れることになります。(4)社宅家賃の計算例
医療法人甲の理事長Aは、 同法人が乙不動産会社?から借り受けているマンション (床面積110平方メートル)に居住している。 医療法人甲が乙?に支払っているマンションの家賃は月30万円であり、 このマンションの本年度の固定資産税の課税標準額は、次のとおりです。家屋 13,000,000円
土地 4,000,000円この場合、社宅家賃の計算は以下の通りとなります。 A 300,000円× 1/2 =150,000円 B(13,000,000円×10%+4,000,000円×6%)× 1/12 =128,333円 AとBのいずれか多い額 150,000円